(中学受験)塾と私立校は「癒着」しているのか? 学校売り込みに塾訪問、年間500以上

産経新聞から転載

 

 

中学受験では、公立に対する不信感の反動で、私立受験を選択する人も少なくないようだが、ある私立学校の教員という方からいただいたメールは少し考えさせられる内容だった。「塾と私立は癒着しているのではないか」というのだ。中学受験では、塾に通って受験に備えるのが定番の対策だが、その塾と私立が「癒着」している現状を問題視しているという。

 第一志望を決め、一生懸命勉強し合格する-。もちろん、それが一番なのだろうが、現実は甘くない。実際、志望校を決めて勉強しても、成績がふるわず、自分の実力でも合格できる学校へと受験校を変えざるをえないケースもある。

 そうしたとき、塾から「A君は◯◯中学が良い。あそこは面倒見が良いので…」などと、安全圏の学校を紹介されることがあるという。メールの主は「このとき、どうして『◯◯中学』という名前が出てきているのか疑問に感じてほしい」と指摘する。

 メールの主が勤務する私立学校は、年3回、受験生が志望校変更を検討する時期を見計らい、塾訪問をしているという。「今年は500以上の塾に訪問しました。特に中学受験は塾の影響力が大きいので…」とのことだった。塾から保護者に学校の宣伝をしてもらうのが狙いだという。

 このメールの主は「『塾の先生から紹介されている=よい学校』というわけではありません。中学受験を人生のひとつのターニングポイントととらえる方もいると思いますが、ターニングポイントは複数あります。あせって学校を決めて失敗ということがないようにしていただきたいです」と記していた。

 ある塾関係者は「うちの塾は受験校を塾側からとやかくいわないことを信条にしている」としたえうで「外から見ていて特定の学校を売り込んでいるようにみえる塾もある」と指摘していた。

 中学受験では、塾のアドバイスが受験校に与える影響は大きいだけに、「この学校が良いですよ」といわれると、生徒や保護者側も心が動いてしまうこともあるかもしれない。

 実際は、親身に指導してくれている塾の先生も多いだろうし「塾から勧められた学校に通って良かった」というケースもあるだろう。また、私立学校が塾側にアピールを行うのも「企業努力」という考え方もある。

 いずれにしても大事なのは生徒たちが自分にあった進路を決めることではないか。塾の進路指導といっても、いろいろな思惑が絡んでいる可能性も頭に入れておいた方が良いということだろうか。