今ならお子さんを有名小学校に…裕福な親を狙った女が語った「でたらめ過ぎる」だましの手口

サンケイ新聞から転載

 

 

今ならお子さんを有名小学校に…裕福な親を狙った女が語った「でたらめ過ぎる」だましの手口

 

 

 

 子供をいい学校に入れたい-。子供を抱えた親が今も昔も抱える悩みだ。「何ならお金を払ってもいい」という“熱心な”親も絶えない。そんな親心につけ込んだ事件が摘発された。「子供を有名小学校に編入学させられる」といって現金をだまし取ったとして、警視庁捜査2課は詐欺容疑でエステ経営者の女を逮捕した。詐取した額は実に約1億円。捜査関係者が「息を吐くように嘘を吐く」とあきれた女の口八丁手八丁とは-。

 



 ■「うちのパパはOB。推薦枠持っているから保証金を…」 悩む母親に甘いささやき

 「子供が志望していた小学校に落ちた。どうにか入れないか…」

 平成21年ごろ、東京都世田谷区に住み、会社役員も務める母親(49)は、22年春に迫っていた息子の小学校入学について悩んでいた。

 この小学校に入れば、難関として知られる付属の大学への進学は格段に楽になる-。悩んだ母親は、同様の話を周囲に相談し始めた。その話が、ある人物の耳に届くまで、そう時間はかからなかった。

 「入学も編入もお世話できる人がいる」。知人にそう言われた母親は、その「知人の知人」に望みを託して接触した。その人物こそ、今回詐欺容疑で逮捕された横浜市在住のエステ経営者、中野真紀容疑者(54)だった。

 普段から周囲に「編入学を世話できる」と吹聴していた中野容疑者は、相談してきた母親に、こうまくしたてたという。

 「うちのパパ(内縁の夫)はその小学校が付属する大学のOB。OBには推薦枠があり、自分の子供は通っていないので枠が余っている。まだ間に合う」

 そして11月ごろ、中野容疑者はさらに、こう持ちかけた。「面接の枠がまだ残っている。入学しても金銭的な迷惑がかからないことを証明するため、お金が必要です」

 最初に要求した金額は30万円。だが、それは1年以上にわたって続いた詐欺話の始まりにしか過ぎなかった。今月14日に中野容疑者を詐欺容疑で逮捕した捜査2課は、被害総額が1億円近くに上るとみて、裏付けを進めている。

 

 



 ■詐欺話は二転三転、「パパに推薦枠」→「パイプのある有力者がいる」知人女性も加担

 捜査関係者も中野容疑者について「息を吐くように嘘を吐く。でたらめすぎて、供述調書を全部読む意欲すら起きなかった」とあきれかえる。

 捜査関係者によると、中野容疑者の手口の特徴は、その「反射的」な、あるいは場当たり的ともいえる口八丁にあるという。

 現に、当初の「内縁の夫を通じて小学校に入学できる」という話は、いつの間にか「パイプのある有力者を通じて入学できる」という話にすり替わり、22年春を過ぎてからは「編入できる」という話に変遷していた。

 捜査関係者は「さらに悪質なのが、知人に小遣いをつかませて詐欺の片棒を担がせているとみられる点だ」とも指摘する。中野容疑者は知人に現金を渡し、小学校の有力者の妻を装って母親に電話をさせていた。不安を募らせた母親を安心させる目的があったとみられる。

 そして「他にも入学を待っている人がいる」などといって危機感をあおり、幾度も現金を要求。数十万~数百万円の現金を90回以上にわたってだまし取り続けていたという。

 



 ■消えた大金の行方は不明…出資金詐欺まがいの投資話に充当?「小学校関係者一人も知らない」

 あきれた手口でむしり取られた巨額の現金は、どこへと消えたのか。

 6千万円分は被害者の母親に詰め寄られて、弁済されたもようだが、残る3千万円余りは返済の見込みは立っていない。

 中野容疑者が高級車を乗り回す姿も見られたことから、現金の一部は高級車の購入費にも充てられていたとみられる。ほかに購入されたのはペットの毛のトリミングや、餌代、電化製品など。捜査関係者は「もともと見えっ張りなところがあり、それが詐欺にもつながっている」と分析する。

 しかし、それだけではない。捜査関係者は「中野容疑者が手を染めていた出資金詐欺まがいの投資にも充てられていたようだ」と打ち明ける。

 中野容疑者は入学詐欺のほか、「株に投資すればもうかる」などといって現金を集めており、出資者に払う配当金として多額の現金を必要としていたという。

 捜査2課の調べに中野容疑者は「小学校の関係者なんて誰一人知らないのに、金を払えば入学できるとだまして金を取りました」と、すべて稚拙なでっち上げだったことを認めた。

 いくら口八丁手八丁とはいえ、いとも簡単に親がだまされた印象もある今回の事件。手段を選ばない“熱心な親”がいる限り、同種の詐欺事件はなくならないだろう。